3大宗教に影響を与えた、現存する最古の宗教(ゾロアスター教)

キリスト教

日本のお寺では年間を通して様々な行事が行われていますが、インドのお釈迦様の時代には見られることのない行事ばかりです。
では、日本の仏教徒たちが勝手に想像し、イベントを行ってきたのかというと、実はそうではないようです。

紀元前5世紀前後に誕生したお釈迦様より遡ること500年前、イランの東部ではザラスシュトラを開祖とするゾロアスター教が始まりました。
ゾロアスター教の教えでは、「この世では善と悪との戦いが延々と続く世界であり、最後には救世主が現れ、善である人間が勝利する・・・」とあります。
この救世主が現れる思想は、ユダヤ教に登場するメシア(救世主)思想へ継承され、キリスト教誕生へとつながっています。
仏教への影響は、紀元前後にローマ帝国へイランの救世主であるミトラ神の話が伝わると、カトリックと融合する形で弥勒菩薩(みろくぼさつ:マイトレーヤ=ミトラ)が登場し、お釈迦様の次に現れる救世主としての崇拝が始まります。
そして、度々現れる救世主は、菩薩と呼び名を変え、大乗仏教の誕生へとつながっていきます。
ゾロアスター教の拡大はバクトリア地方の首長が帰依したことに始まりますが、バクトリアは現在のアフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの一部で、大乗仏教誕生の地とも重なります。
特に鎌倉仏教時代の親鸞や日蓮などは、民衆の救世主として信仰の対象となっています。
そもそもインドの仏教には、お盆法要という概念はありませんが、ゾロアスター教先祖の霊を供養する習慣が、神道の祖霊祭(それいさい)や仏教の年忌法要(ねんきほうよう)として今日に伝承されています。
また、中国ではゾロアスター教のことを「拝火教(はいかきょう)」と呼んでいますが、火を拝むことから、中国仏教では灯明(智恵の光)として扱われています。
仏壇にロウソクや護摩木(ごまぎ)を焚いたりするのも、ゾロアスター教の影響であることは間違いありません。

ゾロアスター教はササン朝ペルシアの国教となった後、イスラム教により壊滅させられますが、今でもイランの一部とインドのムンバイに逃れた人々によって継承されています。

映画『空海-KU-KAI-』の原作、夢枕獏さん『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』では、ゾロアスター教は祆教(けんきょう)として、キリスト教は景教(けいきょう)として、長安に寺院が登場します。
小説ではゾロアスター教の寺院の主は、安薩宝(あんさつぼう)と呼ばれています。
安(あん)は仏教が伝来してきた西域人が中国で名乗る場合に多く使われ、薩宝は在留西域人を束ねる官職を意味しますが、安楽寺の「安」も浄土がある西方を意味するのかも知れません。
また、菩薩の「薩」や、九州薩摩の「薩」も同じ西域を示すものだと思われます。
私が幼少期を過ごした鹿児島では、薩摩芋(サツマイモ)のことを唐芋(からいも)と呼んでいましたが、西域から手土産に持参したゾロアスター教が大きくかかわっているようです。
ちなみに、小説のタイトルである沙門(しゃもん)は、「私欲を捨て仏門にすべてを捧げる修行者」との意味で使われていますが、語源はシャーマン(巫女や祈祷師など霊能力を駆使し、呪術を用いてあらゆる問題を解決する者)で、漢字では「薩満」と書きます。



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