「王舎城の悲劇」の続きで「極楽世界を見せるお釈迦様」。
今日はその物語の中でも、特に幻想的で、かつ心温まる「光の奇跡」の場面についてお話ししたいと思います。
「濁りのない世界へ行きたい」母の切なる願い
物語は、幽閉の身となったイダイケ妃が、お釈迦様に対面する場面から始まります。 愛する息子に裏切られ、絶望の淵にいた彼女は、お釈迦様にこう訴えました。 「お釈迦様、この世界は悪人ばかりで、あまりにも辛すぎます。どうか私に、悩みや苦しみのない、濁りのない清らかな世界を教えてください」
彼女のこの言葉は、現代を生きる私たちが、悲惨なニュースや人間関係のトラブルに疲れ果てた時に抱く、「どこか遠く、平和な場所へ行きたい」という感情と重なるものがありますよね。
彼女はただ逃げたいのではなく、心が安らぐ「魂の避難場所」を求めていたのです。

お釈迦様の眉間から放たれた「光のプレゼンテーション」
イダイケ妃の嘆願を聞いたお釈迦様は、言葉で答える代わりに、驚くべき奇跡を起こします。 お釈迦様の眉間にある「白毫(びゃくごう)」という白い巻き毛から、まばゆい金色の光が放たれたのです。
その光は世界を照らし、まるで映画のスクリーンのように、無数の美しい仏様の世界をイダイケ妃の目の前に映し出しました。
そこには、七つの宝石でできた国や、蓮の花が咲き乱れる国、あるいは神々の宮殿のように煌びやかな国など、ありとあらゆる素晴らしい世界が広がっていました。
これは現代風に言えば、お釈迦様による「移住先のプレゼンテーション」のようなものでしょうか。
「さあイダイケよ、どの世界に行きたいか、自分で見て選びなさい」と、彼女に選択の自由を与えられたのです。
数ある美しい世界の中から、彼女が選んだのは、阿弥陀仏(あみだぶつ)のいらっしゃる「極楽浄土」でした。
そして彼女は改めて、「私はあの極楽浄土に生まれたいのです。どうすれば行けるのか、その方法(観想)を教えてください」と願い出たのです。

父王を救った「口からの光」
ここからが、私がこの物語の中で最も感動する場面です。 イダイケ妃が「極楽への行き方」を尋ねたその瞬間、お釈迦様の口元から、今度は五色の光が放たれました。
不思議なことに、その光はイダイケ妃の方へは向かわず、なんと牢獄に幽閉されている夫・ビンバシャラ王の元へと飛んでいったのです。
当時、王は息子によって餓死寸前の状態に追い込まれていました。
しかし、お釈迦様の放ったその慈悲の光に触れた瞬間、王の心から迷いが消え去りました。
そして、彼は「阿那含(あなごん)」という、もう二度と迷いの世界には戻らない聖者の境地に達したといいます。
目の前のイダイケ妃に教えを説こうとするその瞬間に、遠く離れて苦しんでいる夫のことも決してお見捨てにならなかった。
このエピソードからは、お釈迦様の慈悲が「時空を超えて、同時にすべての人を包み込む」という温かさを感じずにはいられません。

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様々な宗派から改宗を悩んでおられる方も多くいらっしゃるかと思いますが、ご先祖さまや故人の葬儀や永代供養墓を託される前に、お寺の住職様が日々何を大切に守り生きて来られたのか、是非ご一読いただけますと幸いです。



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