何不自由ない王宮での生活から、なぜお釈迦様は出家を決意されたのか。
その決定的なきっかけとなったのが、仏教説話の中でも特に有名な「四門出遊(しもんしゅつゆう)」という出来事です。
父王が隠そうとした世界の「現実」と、王子が見つけた「希望」の物語。今回は、シッダールタ王子の運命を変えた4つの出会いについてまとめました。
父王が作った「地上の楽園」という鳥籠
釈迦族の王子として生まれたシッダールタは、知性と教養を兼ね備えた素晴らしい青年に成長しました。17歳で母方の親戚であるコーリヤ族の美しい娘、ヤショーダラと結婚し、誰もが羨む順風満帆な人生を送っていました。
しかし、父シュッドーダナ王の心には常に不安がありました。
王子が生まれた時、アシタ仙人が予言した「この子は成長すれば、王位を捨てて出家するだろう」という言葉が忘れられなかったのです。
「王子を絶対に出家させてはならぬ」
そう考えた父王は、宮殿に三重の門を作り、王子が外の世界に出られないようにしました。そして、宮殿内をあらゆる贅沢と快楽で満たし、老いや病、死といった「不吉なもの」を王子の目から徹底的に遠ざけたのです。
東・南・西の門で見た「逃げられない現実」
ある日、王子は国王の代理としての公務(勤め)のため、郊外の御苑へ向かうことになりました。
久々の外出に心躍らせて馬車に乗った王子ですが、城門を出るたびに、父王が隠し続けてきた衝撃的な現実に直面します。
- 東の門【老い】:最初に出会ったのは、腰が曲がり、杖をついてヨロヨロと歩く、ひと際醜い老人でした。「人間は誰でも、長く生きればあのような姿になるのです」と聞き、王子は若さが永遠ではないことを知ります。
- 南の門【病い】:次に出会ったのは、道端で苦しみにあえぐ病人でした。健康な自分も、いつ病に冒されるかわからないという恐怖を感じます。
- 西の門【死】:そして西の門では、泣き叫ぶ人々に囲まれた死者を弔う行列を目撃します。「命あるものは、必ず死ぬ」という絶対的な無常の事実を突きつけられました。
「老い、病い、死……。これらからは、王族である私でさえ逃れることはできないのか」
王子は深い絶望と、「では、人間はどのように生きたらよいのか?」という重い問いを抱えることになります。
北の門で見つけた「一筋の光」
悩みぬいた王子は、最後に北の門を出ます。そこで出会ったのは、一人の沙門(しゃもん:出家修行者)でした。
その修行者は、老い・病・死に満ちたこの世界にいながら、どこか清々しく、堂々としていました。その瞳は澄み渡り、世俗の苦しみに汚されていないように見えました。
「あの方の静けさは何だ?」
王子は直感しました。欲望にまみれた宮殿生活にはない、本当の豊かさと満足がそこにあるのではないか、と。
「限りある命を生きる人間にとって、本当に進むべき道はこれだ」
沙門の姿に心を打たれたシッダールタ王子は、ついに華やかな王宮を捨て、真理を求める旅(出家)に出る決意を固めたのです。



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