安楽寺だより第49号(第8回 お釈迦さまの初説法 初転法輪)

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悟りを開いたお釈迦様が、その素晴らしい発見を初めて人々に伝えた瞬間。それは、仏教という長い歴史の「最初のページ」が開かれた瞬間でもありました。

今回は、お釈迦様がかつての修行仲間たちと再会し、世界で初めて仏教の教えが説かれた「初転法輪(しょてんぼりん)」のエピソードをご紹介します。


「私の心はもう揺らがない」

悟りを開いた直後、お釈迦様はこのような力強い宣言をされています。

「私の心の解脱(げだつ)は不動である。これが最後の生存である。もはや再生することはない」

古代インドでは、人間は何度も生まれ変わる「輪廻転生(りんねてんしょう)」の中にいると信じられていました。しかし、お釈迦様が到達した「涅槃(ねはん)」とは、その終わりのない苦しみのサイクルから抜け出すこと。

「心の解脱」とは、欲望や感情に振り回されない「不動の心」を持つこと。

この心さえあれば、どんな状況でも自分を見失わずに生きることができる。それこそが、死の恐怖さえも乗り越えた「不死」の境地なのです。

初転法輪

ガンジス川を越え、かつての友のもとへ

「この真理を誰に伝えるべきか……」

お釈迦様は、ブッダガヤーを離れ、ガンジス川を渡り、サールナート(鹿野苑:ろくやおん)を目指しました。そこには、かつて苦行を共にし、お釈迦様が苦行を捨てた際に離れていった5人の修行仲間がいたからです。

再会した彼らに対し、お釈迦様は静かに、しかし情熱的に語りかけました。

初転法輪

幸せへの「現実的な」アプローチ

お釈迦様が彼らに説いたのは、決して魔法のような話ではありませんでした。誰もが逃れられない「現実」と、そこからの「脱出ルート」です。

  1. 現実を直視せよ「この世に生まれた限り、人間は老い、病み、死んでいくものだ。今の若さや健康のままではいられない」
  2. 苦しみの原因は「執着」「無理だとわかっているのに『今のままでいたい』としがみつき、あくせく悩み、迷信にすがりつく。それが苦しみを生むのだ」
  3. 快楽は解決にならない「瞬間的な快楽に逃げても、それは虚しさを深めるだけだ」
  4. 本当の幸福とは「あらゆる欲を捨て、自分自身への執着(エゴ)を手放し、静かに清らかに生きることだ」
初転法輪

世界で初めて「仏教」が生まれた日

お釈迦様と5人の仲間たちの議論は白熱しました。

彼らは共同生活を始めます。午前中は3人が街へ托鉢(食料をもらいに行くこと)に出かけ、残りの3人は修行に励む。午後は交代する。そんな濃密な日々が続きました。

そして数日後、ついにその時が訪れます。

仲間のリーダー格であったコンダニャ(コーンダンニャ)が、お釈迦様の言葉の真意を悟ったのです。「すべては原因があって生じ、原因がなくなれば滅する」という真理に気づきました。

続いて、残る4人も次々と悟りを開きました。

このサールナートでの最初の説法を、真理の輪(法輪)を初めて回したという意味で「初転法輪(しょてんぼりん)」と呼びます。

ここに、仏教にとって最も大切な「三つの宝(三宝:さんぼう)」が揃いました。

  • 仏(ブッダ): 目覚めた人(お釈迦様)
  • 法(ダルマ): 真実の教え
  • 僧(サンガ): 教えを実践する仲間(5人の弟子たち)

ただ一人の悟りから始まった教えが、仲間へと伝わり、教団としての第一歩を踏み出したのです。

私たちが今、仏教の教えに触れることができるのは、このサールナートでの熱い対話と、弟子たちの「わかった!」という感動があったからこそなんですね。

初転法輪

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