大乗仏教の生誕の地パキスタン

ガンダーラ ガンダーラ仏教

2022年9月4日時点のニュースによると、パキスタンでは洪水により国土の3分の1が水没し、日本の本州と四国を合わせた面積が被災しているとのことです。
パキスタンと仏教に何か関係があるのかと思われる方も多いかと思いますが、仏教誕生の地がインドならば、大乗仏教の誕生の地こそパキスタンといえるでしょう。
聖徳太子以降、鎌倉時代にかけて中国より日本に伝来した仏教は、すべて大乗仏教であるため、あえて大乗仏教という言い方はしませんが、大乗が「大きな乗り物」に例えられるよう、身分に関係なく多くの人々を受け入れる大衆の仏教を意味します。
この大乗仏教発祥の地が、パキスタン北西部のペシャーワルの古称である「ガンダーラ」になります。
パキスタンがピンと来ない方でも、ガンダーラと言われれば「あ!夏目雅子の西遊記に出てくるガンダーラ!」と思われるのではないでしょうか?

ガンダーラは現在のアフガニスタンからパキスタンにかけて存在していた古代国家で、3000年以上前のインダス文明発祥の地でもあり、世界遺産タキシラはガンダーラ最大の都市です。
夏目雅子さんが演じる三蔵法師のみならず、ギリシャからインド遠征を行ったアレキサンダー大王の最終目的の地とされていました。
なぜ、お釈迦様の誕生の地であるインドではなく、ガンダーラが目標の地とされたのか、ヒントはパキスタンの古代建築物など岩絵に隠されています。
シルクロードでインドと中国を結ぶ中継地点であるパキスタンは、多くの僧侶や巡礼者が訪れましたが、夏の間はインダス川の水量が多く渡れません。山河が凍る冬まで滞在し待つ間、岩や建築物の壁に、お釈迦様の姿や仏舎利塔(ストゥーパ:卒塔婆の語源となっているお釈迦様の納骨堂)、ジャータカ物語などを石に刻んで過ごしました。
仏像の遺跡は偶像崇拝でない古代インド仏教には存在しませんが、1世紀から3世紀にかけてイラン系民族が作ったクシャーナ王朝は、ギリシャ彫刻を模して仏像や菩薩像を作るようになりました。
特にカニシカ王は、仏教に帰依し仏教を手厚く保護し、大乗仏教誕生へ寄与したとされています。
このギリシア文明とオリエント文明の融合をヘレニズム文明といいますが、ガンダーラはインドのみならず、ギリシア、イラン、ローマの文化が交差して誕生した文明といえます。
著作権の問題で写真をアップできませんが、ガンダーラの仏像はウェーブヘアーで彫の深い目鼻立ちの仏像で古代ローマ人がモデルになっているとも言われています。
その膨大な記録が刻まれたインドを超えてパキスタンのガンダーラが人々の目標の地となります。
お釈迦様の説かれた仏教は元来真理を追究するものであったはずですが、ペルシャの商人の手により誕生した大乗仏教では、論より証拠が重要で現世での利益が重んじられています。
現在、日本の仏教系宗派は、13宗派56派と数えられていますが、古文書や経典などから真実が明らかになるたび、新たな宗派が増えてきました。
こうしたことから、例えイタズラの落書きであっても、記録が残っている方が真実の正しい仏教であると語り継がれてきましたが、この度のパキスタン大規模洪水にり、多くの証拠が山津波の藻屑となってしまいました。


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