インド北部に広がるヒマラヤ山脈で最も有名なのはエベレストですが、多くの山々が信仰の山であるため登山が禁じられています。
ネパールの西の端を北に上がったところに、標高6656mのカイラスと呼ばれる山がそのひとつです。
富士山が3,776mですから、息をするだけでも大変な標高です。
台湾統治時代、日本一だった新高山(にいたかやま:台湾では阿里山の主峰玉山)でも3,952mと遠く及びません。
カイラスはヒンドゥー教の呼び名で、チベットの人々は「カン・リンポチェ(尊い雪山)」と呼ばれています。
ピラミッドのような形をした山の斜面は、ほぼ東西南北を指しており、世界の中心軸として仏教では弥勒山、ヒンドゥー教ではシヴァ神のリンガと結びつけられ信仰の対象となっています。
この万年雪から溶け出す川を生命の誕生と捉え、川の恵みと共に生き、亡くなると川へ還る「輪廻(りんね:生まれ変わる連鎖)」から、カイラス山の麓にはジャイナ教(お釈迦様の時代からあった仏教と並ぶ禁欲修行)やボン教(カイラス発祥の土着の自然宗教)の巡礼者も、より良い来世への功徳を積むため巡礼に訪れます。
明治33年(西暦1900年)の夏、仏教学者にして探検家である黄檗宗(おうばくしゅう)の僧侶 河口 慧海(かわぐち えかい)が日本人として初めてカイラス山の巡礼に訪れています。
こうした、自然界に対する信仰は、山々の回峰修行により霊力を強めようとする修験道(しゅげんどう)など、日本の山岳信へ仰結びついたのではないかと思います。
お寺の地図記号は卍(右巻き)で表しますが、仏教徒はカイラス山を右回りに巡礼します。
それに対し、ボン教では卍をひっくり返し左巻きに表示しますが、ボン教徒は左回りに巡礼します。
卍の起源は吉祥を表すとされていますが、カイラス山は四大大河の源流を生んでいることから、どちらも湧き出る川を表すのではないかと想像します。

カイラス山を源流とする川

ブラマプトラ川:「ブラフマーの息子(プトラ)」の意味で、バングラデシュでガンジス川と合流。
インダス川:パキスタン最大(3,180㎞)の河川でインダス文明を生む。
カルナリ河:ネパール最大の川(507km)、ガンジス川の支流としては最長の10180km。
サトレジ川:パキスタンでインダス川に合流し1368km。この川を含めたデルタ地帯は、製作費81億BSやHuluで配信のインドの大河ドラマ「ポロス」の主人公パウラヴァ族領土。

カイラス山の向こうに見えるの湖は、河口慧海著『西蔵(チベット)旅行記』では「清浄霊妙の湖」と記されていますが、宮沢賢治の詩に登場する、金・銀財宝の湖である阿耨達池(あのくだっち)でしょうか?